誓約に勝ったと思い込んだ須佐之男(スサノオ)は、すっかり調子に乗って乱暴を重ねました。田のあぜを壊し、用水路を埋め、神聖な御殿を汚し、あげくには機織り小屋の屋根に穴を開けて、皮を剥いだ馬を投げ込んだのです。驚いた機織りの女神が命を落とすほどの騒ぎでした。
度重なる弟の暴挙に心を痛めた天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、ついに天の岩屋戸(アメノイワヤト)の中に閉じこもり、固く戸を閉ざしてしまいます。太陽の神が姿を隠した世界は、昼も夜もない真っ暗闇に沈み、あらゆる災いがいっせいに噴き出しました。

困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天の安の河原に集まって知恵をしぼります。知恵の神・思金神(オモイカネ)の策で、まず長鳴きの鶏を集めて鳴かせ、榊の木に鏡と勾玉を掛け、祝詞を唱えました。そして天宇受売命(アメノウズメノミコト)が桶を伏せて舞台にし、その上で神がかりのようにおもしろおかしく踊りだします。神々はどっと沸き、天地が揺れるほどの大笑いに包まれました。

外の賑わいを不思議に思った天照が、戸を少しだけ開けて覗いた。その一瞬、ウズメは「あなたより貴い神がいらしたのです」と鏡を差し出し、鏡に映る自分の姿に天照が見入った隙に、力自慢の天手力男神(アメノタヂカラオ)が岩戸をぐいと引き開けました。世界に光が戻ります。二度と閉じこもれぬよう、戸には注連縄(しめなわ)が張られました。知恵と笑いが、太陽を呼び戻したのです。

世界に光が戻ると、神々は騒動の張本人である須佐之男に、重い罰を科しました。数多くの品物を償いとして差し出させ、髭と手足の爪を切り、そのうえで高天原から追放したのです。行き場を失った須佐之男は、天を追われて地上へと降っていきます。荒ぶる神は、はたしてどこへ向かうのか。彼の物語は、ここから意外な英雄譚へと転じていきます。