天の岩戸

第 八 章

天の岩戸あまのいわと

太陽が隠れた世界を、神々の知恵と笑いが救う。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

誓約に勝ったと思い込んだ須佐之男(スサノオ)は、すっかり調子に乗って乱暴を重ねました。田のあぜを壊し、用水路を埋め、神聖な御殿を汚し、あげくには機織り小屋の屋根に穴を開けて、皮を剥いだ馬を投げ込んだのです。驚いた機織りの女神が命を落とすほどの騒ぎでした。

度重なる弟の暴挙に心を痛めた天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、ついに天の岩屋戸(アメノイワヤト)の中に閉じこもり、固く戸を閉ざしてしまいます。太陽の神が姿を隠した世界は、昼も夜もない真っ暗闇に沈み、あらゆる災いがいっせいに噴き出しました。

岩戸に隠れ、闇に沈む世界
岩戸に隠れ、闇に沈む世界

困り果てた八百万(やおよろず)の神々は、天の安の河原に集まって知恵をしぼります。知恵の神・思金神(オモイカネ)の策で、まず長鳴きの鶏を集めて鳴かせ、榊の木に鏡と勾玉を掛け、祝詞を唱えました。そして天宇受売命(アメノウズメノミコト)が桶を伏せて舞台にし、その上で神がかりのようにおもしろおかしく踊りだします。神々はどっと沸き、天地が揺れるほどの大笑いに包まれました。

天宇受売命の舞
天宇受売命の舞

外の賑わいを不思議に思った天照が、戸を少しだけ開けて覗いた。その一瞬、ウズメは「あなたより貴い神がいらしたのです」と鏡を差し出し、鏡に映る自分の姿に天照が見入った隙に、力自慢の天手力男神(アメノタヂカラオ)が岩戸をぐいと引き開けました。世界に光が戻ります。二度と閉じこもれぬよう、戸には注連縄(しめなわ)が張られました。知恵と笑いが、太陽を呼び戻したのです。

岩戸開き、光が戻る
岩戸開き、光が戻る

世界に光が戻ると、神々は騒動の張本人である須佐之男に、重い罰を科しました。数多くの品物を償いとして差し出させ、髭と手足の爪を切り、そのうえで高天原から追放したのです。行き場を失った須佐之男は、天を追われて地上へと降っていきます。荒ぶる神は、はたしてどこへ向かうのか。彼の物語は、ここから意外な英雄譚へと転じていきます。

登場する神々

天照大御神
アマテラスオオミカミ
弟の乱暴を嘆いて岩戸に隠れた太陽神。神々の策によって再び世界に姿を現します。
天宇受売命
アメノウズメノミコト
岩戸の前で滑稽に舞い、神々を大笑いさせた芸能の女神。神楽や芸能の祖とされます。
天手力男神
アメノタヂカラオノカミ
岩戸をこじ開けた怪力の神。力・スポーツの神として信仰されます。

豆知識・この神話の背景

神楽・芸能のはじまり
ウズメの舞は、日本の神楽や芸能のルーツとされます。神を楽しませる“神遊び”が、後の祭りや舞台芸術につながりました。
注連縄と日食説
岩戸に張られた注連縄は「神聖な領域を示す印」の起源とも。岩戸隠れは、太陽が欠ける“日食”の記憶を映したものだとする説もあります。
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