禊と三貴子

第 六 章

禊と三貴子みそぎとさんきし

けがれを洗い流す禊から、三柱の貴い神が生まれる。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

黄泉の国から命からがら逃げ帰った伊邪那岐命(イザナギノミコト)は、体にまとわりついた死のけがれを嫌い、「身を清めよう」と、筑紫(今の九州)の日向(ひむか)にある川辺へ向かいました。

杖や帯、衣服を脱ぎ捨てるたびに、そこから神が生まれます。そして川の流れに身を沈め、水で体を洗いすすいでいくと、そのしぶきからも、けがれを祓う神や、海の潮流を司る神が次々と生まれ出ていきました。禊(みそぎ)とは、水の力で心身を清める神聖な行い。その一つひとつが、新しい神を生み出していったのです。

川辺での禊
川辺での禊

そして、いよいよ最後の場面。左の目を洗ったとき、まばゆい光とともに天照大御神(アマテラスオオミカミ)が生まれました。右の目を洗うと、静かな光をたたえた月読命(ツクヨミノミコト)が。そして鼻を洗ったとき、荒々しい力を持つ建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)が生まれ出でます。

三貴子、生まれ出づ
三貴子、生まれ出づ

この三柱は、数ある神々の中でもとりわけ貴い「三貴子(サンキシ)」と讃えられました。伊邪那岐は大いに喜び、それぞれに世界を分け与えます。天照には光あふれる天上界・高天原を、月読には夜の世界を、須佐之男には広い海原を。こうして、太陽・月・嵐という、この世界を動かす大きな力の担い手が定まったのです。

世界を分かち与える
世界を分かち与える

三貴子を得た伊邪那岐は、大きな役目を果たし終えたかのように、物語の表舞台から静かに退いていきます。ここから神代は、太陽の女神・天照大御神を中心に回りはじめます。けれど、海原を任された弟・須佐之男は、その務めに背を向け、亡き母を慕ってただ泣きわめくばかり。姉と弟のあいだに、やがて大きな波乱が巻き起ころうとしていました。

登場する神々

天照大御神
アマテラスオオミカミ
伊邪那岐の左目から生まれた太陽の女神。高天原を治め、のちに皇室の祖神として神話の中心となります。
月読命
ツクヨミノミコト
右目から生まれた月の神。夜を治めるとされますが、古事記での登場は少なく、謎の多い神です。
建速須佐之男命
タケハヤスサノオノミコト
鼻から生まれた嵐の神。荒ぶる力を持ち、以後の物語で暴れ、また英雄ともなる複雑な神です。

豆知識・この神話の背景

禊・祓(はらえ)の起源
川や海で身を清める「禊」、罪やけがれを取り除く「祓」。神社で受けるお祓いの原点は、この伊邪那岐の禊にあるとされます。
三貴子誕生の地
禊がおこなわれた地は、宮崎市の阿波岐原(あわきがはら)に比定され、みそぎ池が伝承地として残っています。
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