伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)は、天と地をつなぐ「天の浮橋(アメノウキハシ)」に立ちました。授かった天沼矛(アメノヌボコ)を、下界を覆う塩水の海へ差し下ろし、こをろこをろと音を立ててかき混ぜます。
そっと矛を引き上げると、切先からしたたり落ちた潮が積もり固まって、小さな島になりました。世界で最初の陸地、淤能碁呂島(オノゴロジマ)です。二柱はさっそくこの島に降り立ちました。

島に立てた太い柱(天の御柱)を、伊邪那岐は左から、伊邪那美は右から回り、出会ったところで夫婦の契りを交わします。ところが最初は、女神である伊邪那美から先に声をかけてしまいました。そのためうまく子が育たず、生まれた水蛭子(ヒルコ)は葦の舟に乗せて流されてしまいます。天の神に相談し、今度は男神から声をかけて、やり直しました。

すると今度はうまくいきます。淡路島を皮切りに、四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、そして本州。次々と大きな島々が生まれました。これらをあわせて「大八島国(オオヤシマグニ)」といいます。こうして、私たちの住む国土のかたちが、神々の手で形づくられていったのです。

島々を生み終えた二柱は、続いて海の神、川の神、山の神、風の神、木の神と、そこに宿るさまざまな力を次々と生み出していきます。荒れていた世界は、みるみるうちに豊かで、にぎやかなものへと変わっていきました。けれど、満ち足りたその先に、二人はまだ、思いもよらぬ深い悲しみが待っていることを、知る由もなかったのです。