神生みと火の神

第 四 章

神生みと火の神かみうみとひのかみ

火の神の誕生と引きかえに、母神は黄泉へ旅立つ。

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この物語は、原文を読みやすく現代語にしたかなり“はしょった”要約・脚色版です。細部や表現は正確な原文・訳注書と異なる場合があります。

国土を生み終えた二柱は、続いて、そこに満ちる自然の神々を生みはじめます。山の神、海の神、川の神、風の神、木の神、野の神。世界を彩るあらゆる力が、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)のもとから生まれ出ていきました。

ところが、最後に火の神・火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)を生んだとき、悲劇が起こります。燃えさかる炎の神を産んだ伊邪那美は、その火に身を焼かれ、床に伏せってしまったのです。苦しむ彼女の吐いたものや流したものからさえ新たな神が生まれましたが、伊邪那美はついに息を引き取り、死者の国・黄泉(よみ)へと旅立ってしまいました。

森羅万象の神々が生まれる
森羅万象の神々が生まれる

最愛の妻を失った伊邪那岐は、地に伏して激しく泣きました。その涙からも神が生まれたと伝えられます。やがて悲しみは怒りに変わり、伊邪那岐は腰の十拳剣(トツカノツルギ)を抜くと、我が子である迦具土の首を斬り落としてしまいました。

火の神の誕生と母の死
火の神の誕生と母の死

すると、飛び散った血や、切り分けられた亡骸のひとつひとつからも、雷や刀、山にまつわる新たな神々が次々と生まれ出でます。命を生む喜びと、命を失う悲しみ。そのどちらもが、新しい神々を生み出していく。世界のかたちが、痛みとともに深まっていくのでした。

十拳剣を振るう伊邪那岐
十拳剣を振るう伊邪那岐

けれど、伊邪那岐の悲しみは、それでも癒えることはありませんでした。冷たくなった妻の亡骸にすがって、彼はある決意を固めます。「もう一度、あの人に会いたい」。生きた者が決して足を踏み入れてはならない、死者の国・黄泉(よみ)へ。伊邪那岐は、たった一人で下りていこうとするのです。

登場する神々

火之迦具土神
ヒノカグツチノカミ
火そのものを司る神。その誕生は母の死を招きますが、火は人の暮らしに欠かせない力でもあります。
伊邪那美命
イザナミノミコト
火の神を生んだことで命を落とし、黄泉の国へ。次章で伊邪那岐と再会することになります。
伊邪那岐命
イザナギノミコト
妻を失った悲しみから、我が子・迦具土を斬る。その剣や血からも多くの神が生まれました。

豆知識・この神話の背景

火伏せの神として祀られる
火は恵みであると同時に災いにもなります。カグツチは各地で火災除け(火伏せ)の神として、秋葉神社や愛宕神社などに祀られています。
剣から生まれる神々
迦具土を斬った十拳剣からは、雷や剣の神が生まれました。武と鉄の力が、火の神の死から立ちのぼるのです。
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